ついに小諸でコロナ患者発生   新型コロナウィルスの日々

 


 2020年7月21日、信濃毎日新聞小諸市でコロナ患者が発生したことを報じた。人口約4万、浅間山麓にあるのどかなこの町でもついに、という感じだ。感染者は20代男性、長野銀行小諸支店勤務で外勤だという。濃厚接触者は家族、同僚2人、外勤の訪問先2人とのこと。初めて身近で起きた例だが、3月ごろから続いていた新型コロナ騒動のせいで慣れてしまったのだろう、私を含めて緊張感はあまりない。静かに新たな情報を待つだけだ。

 

 その後のテレビニュースで、この若い銀行員が佐久穂町の住人だということ、ここ2週間以内に業務では県外に出ていないこと、などが伝えられた。つまり彼は車で30分ほどの距離を毎日通勤していたことになる。業務では県外に出ていないとのことだが、ならば私用では東京あたりにでも行ったのではないか、とだれもが心の内で思うはずだ。いまいちばん危険とされている新宿の「夜の街」、飲食を伴う接待をする風俗営業の店などに行った人は、なかなか自分の行動経歴を話さないというではないか。と憶測が広がる。つまり私たちが知りたいのは、どこでどのように感染したかだ。もし業務以外でも県外に出ていないということなら、彼は小諸市佐久穂町で感染したことになり、そうなれば私たちも感染する可能性が高いということになってしまう。けれど新型コロナウィルス陽性が判明して時間がたっても、感染経路は一向に明らかにされない。私もつれあいのモトさんも、長野銀行と縁がないではないが、ここしばらくはこの銀行も、銀行前に設置されている三井住友銀行のATMも利用していない。

 

 同じテレビニュースで長野県内でもう一人の感染者が出ていたことを知る。東京在住の80代男性。家族と一緒に上田市を訪れていた際に転倒事故を起こし、病院に搬送された。その病院がたまたまコロナ感染症指定病院だったせいもあって、男性に微熱倦怠感などがあったことからPCR検査をしたところ陽性と判明したという。検査結果が出る前に男性に接触してしまった人たちは、現在PCR検査の結果待ちとのことだが、恐怖にかられていることだろう。だから東京から来た人が嫌われるのもやむを得ないことだ。上田は小諸からは電車で20分の距離だ。私は実は19日、20日と2日続けて上田に行っていた。この男性の場合も転倒事故がどこで起きたのかなどは不明のままだ。だが私はたぶんこの男性とは接点はないだろう。

 

 この日午後になって、モトさんは行きつけの喫茶店へ出かけて行った。するとモトさんが週一回通っている筋トレ教室から電話があった。市内でコロナ患者が発生したので、明日から当分教室は休みにする、再開のときにはまた連絡する、とのことだ。筋トレ教室は老人介護施設が主宰している老人向け体操教室だから、高齢者ほど重症化しやすいコロナ感染に神経質になるのは当然のことだ。3月4月5月の3か月間も、コロナのせいで休みだった。その影響かどうか、モトさんは椅子から立ったり座ったりするのさえ難儀になった。やっとなんとか歩けるようになったところだから、こんどの休み期間は気をつけて過ごさなければならない。

 

 だがほかにも心配事はあって、それはモトさんがコロナのことさえしょっちゅう忘れてしまう、ということだ。今日のように喫茶店に行ったり。たまに酒を買いに行ったりするとき、いくら言ってもマスクを着けるのを忘れる。周囲の全員がマスク姿でも、何も気づかず平然と一人マスクなしでいたりする。だからモトさんが帰宅すると、ほらまっすぐ洗面所へ、手洗いうがい、と号令をかけるのだが、モトさんはそれに従いつつも、なぜそうしなければならないのかピンとこないふうだ。

 

 ところで市内でコロナ感染者発生のニュースがあった7月21日は、土用丑の日でもあった。いま我が家には私の娘が滞在中だ。昨年暮れから東京でアメリカのテレビドラマの撮影クルーにくわわって仕事をしていた。シリーズものなので10か月間の予定で、9月まで拘束されるはずだったが、コロナのせいで3月いっぱいでいったん打ち切りになった。監督は5月に会おうと言ってアメリカへ帰ったそうだが、どうやら再開の見通しは立たなくなった。娘はイギリスで別の仕事の予定があり仕事仲間が待っているからと、渡英のチャンスをねらっている。航空便も渡航先の受け入れ態勢もコロナの状況で刻々動くから、予定を立てるのも大変だろうが、娘はなにやら黙々とことを進めているようすだ。

 

 そんなこんなでせっかく娘がいるのだからと、丑の日のウナギの買い出しに一緒に出掛けた。魚類の品ぞろえがいいスーパーに着くと、娘がマスクを忘れたことに気づいた。私はいつもはバッグに予備を入れているが、この日に限ってそれがなかった。仕方がないので私が店内でマスクを調達し、外で待っていた娘はそれを着けて一緒に店内に入った。ちなみに使い捨ての不織布マスクが5枚入り160円ほどで買えた。

 

 それにしてもウナギ売り場の見事さといったらなかった。大量のかば焼きが結構高価なのにどんどん売れていく。静岡産と愛知産がほぼ半々にならんでいたので、モトさんの出身地の愛知産を買うことにした。私はふだんから小食なのだが、娘に食べられるよ、挑戦してみなよ、などとそそのかされて、私のぶんも同じような大きいウナギにした。

 

 夕飯どき。実は昨日夕飯を食べながら、丑の日のウナギはどうしようかとモトさんの意見も聞いたのだ。どこか料亭に予約を入れてみようか、かば焼きを買ってきて自宅で食べようか、それともあそこの川魚料理屋でさばいてもらって、焼くのまでやってもらえないだろうか、などなど。だがモトさんは昨日そんな話をしたことも、今日が丑の日だということも、すっかり失念していた。
 それでもおいしい大満足の夕飯だった。当地のコロナ患者の動静をニュースで追いかけながらではあったが。