カルテル・ランド

夏風邪とはいえ、私としては珍しく38度の熱が2日ほど続いた。普段の生活では考えないようなことも考えた。頭がふわっとする感じが残っているので、自分では病み上がりだなと思っている。

 

なのに、病み上がりの身としてはちょっとハードな映画、マシュー・ハイネマン監督の「カルテル・ランド」を見てきた。メキシコの恐ろしい麻薬戦争のドキュメンタリーだ。

 

メキシコのミチョアカン州で、麻薬カルテルによる市民を巻き込む凶悪犯罪に業を煮やした町医者ミレレスが、自警団を組織する。自警団は武器を調達し、市民の支持を得て、自警団を非合法組織として取り締まりに来た軍や警察を追い返すまでになる。

 

一方でこの映画は、メキシコから持ち込まれる麻薬や不法移民を阻止するためのアメリカ側の自警団も追っている。アリゾナ州アルター・バレーで、退役軍人ネイラーが率いるアリゾナ国境自警団だ。

 

自警団に集まるのは普通の市民なのだが、両方とも銃を手にバンバン撃ち合って戦う。両方のリーダーの主張も共通している。二人とも、自分がやっているのは正義だ、家族や市民は自分たちで守らなければならないとの堅い信念を持っている。

 

だがことはそれだけではすまない。自警団に権威ができ始めると、それをかさに着てちょっとした悪事を働くものが出てくる。市民の共感が薄れ、やがてミレレスを置き去りにしたまま、自警団は合法組織化されて軍や警察の傘下に入ってしまう。ミレレスは武器所持か何か小さい罪で収監されてしまっている、が結末だった。

 

ああ、どこに出口はあるのだろう。ミレレスの女好きなところ、その点に関しては妻も手を焼いていた、などというのは、結末から見れば、それくらいのこと何なのさ、というくらいのささやかないろどりといったところだ。