大暑だそうだけれど

昨日は大暑。暦の上ではいちばん暑い日なのだそうだ。

夏風邪からやっと回復し、さて日常生活を取り戻そうと気構えている。水曜日にはヨガに行った。病み上がりだがなんとかこなして、その日は気分よく熟睡した。その翌日は美容院にカットに行った。しばらく前から気になっていたから、晴れ晴れした気分になった。帰宅してから髪を染めた。

 

そしてその次の日の昨日。長野市まで映画を見に行く予定であった。「マイケルムーアの世界侵略のすすめ」が最終日なのだ。乗る電車の時間なども全部調べて準備していた。雨傘を持った方がよさそうだから、それに合わせてバッグもちょっとだけ大きめのにした。ここに住み始めてから、長野市程度の都会が私の好みに合う感じがして、たいていは映画のついでだが、長野に出かけるのを楽しみにしている。

 

ところが、諸事情で私としては珍しく映画は取りやめにした。無茶はするな、と体が言ったのだ。来週も見たい映画があるから、まあ今日のところはやめておくか、残念だが。そう思ったらとたんに眠くなって午前中に昼寝を30分してしまった。

 

昼食後、隣町の図書館へでかけた。隣町はわが町より人口も少なく、駅前商店街も本当に静かなものだが、私はこの街が好きだ。図書館ではフィリップ・ロスパトリック・モディアノを借りた。この2人は、今の私の好みに合っている。風邪をひいていた間も、彼らのおかげで布団の中にとどまることができた。あとは、自分でも意外だが宮沢賢治中島敦図書館というのは、本を眺めているうちに思わぬ感覚を呼び覚まされるのがいい。この2人の名前を目にしたとき、自分が読み残したものがある、という意識が働いたのだ。宮沢賢治を嫌いだと公言してきたが、好きなところをみつけてみようか、とも思った。

 

そして、ひっそり閑とした商店街に足を延ばす。歩いてみると、ちょっと足元が心もとない。やはり夏風邪の影響が残っている。そしてひと気のない通りの、ひと気のない小間物店に立ち寄る。迷惑は承知でたまにおしゃべりに立ち寄るのだ。

 

きょう盛り上がった話は、スイスのベーシックインカムの話。この店を切り盛りしている直美さんは、ベーシックインカムのことは知らなかったが、へえそれで?へえそれはなぜ?次々畳みかけてくるので、ここに来ると思わぬ話が飛び出すのだ。ごくふつうの店。でも大きいショウウィンドウに、あまり目立たない商品を背景に「9条をこわすな」のポスター。そして店の片隅にはパレスチナ支援の石鹸やオリーブオイルもある。

 

お喋りしている間にも、いくら静かな店でも数人の客は現れる。なんといっても、ここは駅前商店街なのだから。私は夏風邪の名残の咳がまだ取れないし、直美さんは嫌な顔一つしないけれど、しかしやはり余りの長居は迷惑だろうと適当に席を立ち帰ってきた。

 

大暑、と言っていたけれど、今日は寒いくらいだった。

夕飯をすませて早めに風呂に入ったが、多めの湯を張って体を沈めた。長湯して体を温めよう、とほんとうに思ったのだ。ここでは、そんな大暑の日であった。