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そのださん 2  女ともだちー3


そのださんにメールを書いた

 

 

その後、お元気でいらっしゃいますか?

春の気配のなか、なぜかきゅうに

そのださんのことを思い出しています

電話してみたのですが通じませんでした

このメールが届くことを祈りつつ

 

 

実はもっとあわてていた

聞いてもらいたいことがあった

人間関係のつまづき、いまさらまたと思ったが、やはりそのださんしかいなかった

恥を忍んで話そうと電話してみたら

この電話は使われておりません、とのメッセージが聞こえた

 


そのださんは私より10歳うえだから82歳

死んでもおかしくない、寝込んでいてもおかしくない

そう思ったら、死ぬ前に一度会いたくなった

思い詰めつつメールを送ったら、こともなげな返信があった

 


  メールありがとうございます

  私もあなたのことを思い出しています

  昨年10月6日に転居した、そのときからずっと

  転居したのは面影橋の近く

 

 

そうだったのか、私もずっと前に面影橋近くに住んでいた

引っ越してすぐに、そのださんがやってきた

大げさな鉢植えの引越祝いをくれたような気がする

そうだ、クリスマス前のことで、ポインセチアの鉢だった

そのださんのメールは続く

 

  ひとり暮らしを楽しみたくて娘たちとははなれたのですが

  UR都市機構(旧公団)賃貸の家賃はとても高額

  公営住宅の申し込みを続けていたけど落選ばかり

  このままでは死後の遺品整理のお金もなくなってしまう
 


わあ、よかった生きていた、仕事もしているなんてすごい

と思ったら、すっと会いたい気持ちはしぼんでいった

 


  私は82歳だけど元気です

  でも弟3人妹5人のきょうだいのうち単身者が

  入院とか老人保健施設入所とかで

  総領の私が身軽なので、おせっかいを焼いているので忙しい

 


そうだった、そのださんは長女で、親を助けてたくさんの弟妹の世話を焼いた

だからあんなにしっかりしちゃったんだ

いつも肩をいからせ、ギリギリいっぱい頑張っている

 


  一段落したらお手紙差し上げます

  春になってお会いできるのを楽しみにしています

 


もう会いたい気持ちは消えている

面影橋あたりの神田川は、川の両縁の桜がとても見事だ

今年は、一人で見に行ってみようか

 


もう20年になる

その年の4月1日、青空の下で神田川の桜は満開だった

そしてその日、私は父の訃報を受け取ったのだ