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まりこちゃん   女ともだちー2

 

近道して懐古園の三の門をぬけたら
まりこちゃんに会った
こんにちは、の合図に腰のあたりで手をひらひらさせ
そのまま通り過ぎた


まりこちゃんは観光ガイドの制服姿
オレンジの野球帽に緑のベスト
三の門を指さしながら、どこかのおじさんに説明している


通り過ぎたらまもなく、後ろからまりこちゃんの声がした
しづえちゃん、どこへ行くの
おじさんへの説明は終わったらしい


美容院へ行くのよ、まりこちゃんはどこの美容院?
あたしはいちばん安い二千円の店、カットだけだから
あらいいわね、それどこにあるの?


と、まりこちゃんはきゅうに話題を変えた
しづえちゃん、お母さんにそっくりになってきたね


その言葉で、ガイドの制服のまりこちゃんが消えて
短いワンピース姿のまりこちゃんがあらわれた
ひとけのない北国街道沿いの金物屋
まりこちゃんは、店番しながら遊んでいる


しづえちゃんのお母さん
いつも、こんにちは、って丁寧にお辞儀して下さって


ちがうのよ、まりこちゃん、母はこの町がきらいだったの、と私は心の中でつぶやく
遠くから来て、この町のことが分からなかった母は
仕方ないのでいつもにこにこ、こんにちは、こんにちは
そうしていれば大丈夫、と自分に言い聞かせていた


私もほんとはこの町がきらい、なのに帰ってきてしまった


まりこちゃんは、この町が好きなの?
と聞きたいけど聞かない
好きだから観光ガイドをしているの?
それとも、寂しくて人に会いたいだけ?


しいんとした夏の日の午後
オレンジの野球帽のまりこちゃんと
白い日傘のしづえちゃんは
じゃあねと手を振り
それぞれ街へ、公園へと足をむける