「母と娘はなぜこじれるのか」斉藤環 対談集

斉藤環は精神科医だが、母娘問題は特殊だと痛感しているという。父息子、母息子、父娘などとは全く違う難しさがあるというのだ。彼はこの問題に関する著書を出したこともあるが、それでもなお謎の部分があるという。今回はそれを解き明かそうと、女性7人とこ…

バーバラ・ピムという作家

バーバラ・ピム著「よくできた女(ひと)」「秋の四重奏」 バーバラ・ピムという作家を、私は知らなかった。 図書館でたまたま目にとまり読んでみたのだが、出会えてよかったとの思いが沸き上がる。普通の人の静かな日常を静かに語る。それだけだが静かな感…

「我らが少女A」高村薫著 を読む

高村薫が、重厚な長編を書く作家であることは知っている。数十年前になるだろうが「レディージョーカー」が大きい話題になったとき、いくつかの著書を手にしてみたが、読み切ることができなかった。いまにして理由を考えてみると、あのころは仕事が忙しくて…

『聖なるズー』  濱野ちひろ著

著者は、セクシュアリティーの研究をしている。 セクシュアリティーとは「セックスに関するあらゆること」を指す言葉だという。あらゆること、とはなにか。セックスそのもの、性的指向、性的嗜好、生殖、生殖の管理、妊娠、中絶、さらに、性にまつわる教育・…

ぼくはお金を使わずに生きることにした マーク・ボイル著

著者マーク・ボイルは、1979年アイルランド生まれ。2008年11月末から1年間、イギリスのブリストル郊外でお金を使わずに生活した。その記録がこの本だ。 マーク・ボイルは、アイルランドの大学で経済学と経営学を学び、卒業したら手っ取り早くお金を稼ごうと…

『四人の交差点』(トンミ・キンヌネン著)  自分の人生を生き切る人たち

家族というものに対して、私は不可思議な両極端の感情を持ち続けている。 自分自身は家族を持つことを頑固に拒否してきて、いまそれはある程度は思いどおりにいったかに見え、心地よく日々を過ごしている。そのくせふと気づくと、かつて自分が属していた家族…

死刑の基準 「永山裁判」が遺したもの

永山則夫のことをもっと知りたくなって、同じ著者の本をもう一冊読んだ。『死刑の基準 「永山裁判」が遺したもの』堀川恵子著だ。 先日取り上げた石川義博医師による精神鑑定書は、永山の生い立ちを精緻に追っていき、彼がなぜ4人を殺して連続射殺魔と呼ばれ…

永山則夫 封印された鑑定記録

年末から年始にかけて「永山則夫 封印された鑑定記録」堀川恵子著を読んだ。自分がうわべしか知らなかったことに気づかされた、ずしりと重い本であった。 永山則夫が4件の連続射殺事件を起こし逮捕されたのは、1968年から69年にかけてのことだという。事件お…